「世界には推ししかいないんだ。」

2・5次元の感想や俳優の茶の間ライフ中心にアイドルや声優についても書いてるブログ。

「心が叫びたがってるんだ」は佳作だった。

 こんばんは。かのです。

 岡田磨里氏熱が高いうちにここさけを観ることにして、観ました!

 今回の感想はネタバレを含みますのでまだ観ていないけどこれから観る予定の方は戻るを推奨致します。

 私はこの作品については主要キャストの声優陣くらいしか知らないで観ました。

 キャスティングについては、仁藤が他の3人に比べて劣ると感じました。茅野さんあたりがやりそうな役だけど「あの花」に出演されてるのでダメだったのかな。

 坂上役の内山くんは個人的に好きなので、歌のシーンはお察し・・・(クレームがきても仕方ない)ですが、この手の王子様キャラを嫌味なく普通の男子っぽく演じることにおいては信頼しています。「あの花」が同様に子役出身者の入野さんだったので順当なキャスティングではないかと。

 そして、今回ぴったりだったのが成瀬と田崎。まず、田崎の細谷さんは声質が骨太なのでただのイケボではなかなか出せない野球部男子がしっくりきすぎ!ご本人も天然っぽい雰囲気があって、以前に観た方言を喋る役もとてもよかったのでキャリアは割とある方ですが、都会にすれてない普通の高校生が似合います。

 ヒロインの水瀬さんは、個人名義の歌をCMで聴いてとても歌声が好きだと思った声優さん。歌唱シーンはとても上手でしたし、声のかわいさ(落ち着いているが、かわいい声)も序盤ほぼ声を発さない成瀬にはぴったり。声を聴けたときの喜びが倍増します。彼女は「ごちうさ」のチノちゃんで有名ですね!私はとても好きなお声です。

 キャラは、リア充感の強い坂上と仁藤が苦手でした。一番感情移入できたのは成瀬。田崎はわかりやすい。ただ、この映画はヒロインの成瀬に共感できないと本当に苦痛だろうなと感じます。彼女は幼少期のトラウマから人前や母親の前では声を発しません。クライマックスの劇の本番のシーンも個人的な理由でばっくれます。周りとコミュニケーションをとって成長してこなかったので精神的に幼稚です。

 ただ、坂上が言っている通り喋らないけど表情豊かな女の子であり、反応がいちいち可愛い。お喋りで、言葉で人を傷つけてきたから喋らなくなったという設定も私は納得できました。

 そして、成瀬の性格以上にこの作品が人を選ぶのは脚本。岡田さんワールド炸裂。彼女の作風を知った上で観てる自分のような人は「やっぱ岡田ワールドはこうだよね」となるでしょうが、「あの花」しか観ていないとか初見の方は辛いと思う。

 まず、成瀬の幼少期のトラウマが重い。ラブホとか連呼してるし。(確かにラブホってお城みたいな外見してるの多いような)母親も彼女へのあたりが強い。

 レビューなんかで「君の名は」と比較して酷評してる人がいるけど、これはそもそも万人向けのアニメ映画ではないです。(君の名はを観てないので比較できませんが)

 岡田さんの作品の特徴として、人物の心理描写の巧さがありますが、思春期のつらい記憶を思い起させるような傷のえぐり方をします。登場人物が抱えてるものとして、家庭環境やひきこもり、失語などがあるのも岡田さん自身の体験からきてると思われます。

 つまり、ここさけも深夜アニメではなく劇場公開作品ですが、共感できない人々も確かに存在する。対人関係で悩んで病んだりした経験が学生時代にない人やメンヘラを理解しようとしない人にはお門違いな作品なのです。逆に、覚えのある人にはすごく傷をえぐってくるので辛くて涙が出たりします。

 私も明るい青春はほとんど過ごしていないので、成瀬がつらい思いをするたび泣いてた。人の痛みに敏感すぎて自分を追い込んでしまうようなタイプの人におすすめしたい作品。現役の高校生から大人まで。

 作風繋がりで、私はエンディングが乃木坂って知らないで観たんですがこの曲は乃木坂のアルバムをヘビロテしてたので好きな曲のひとつでした。エンドロールでイントロが流れたとき「ん?これ私めっちゃ好きな曲だ・・・なんだっけ?」ってなってボーカルが入ったとこで気づきましたw

 深夜アニメだったらメジャーアイドルの主題歌はないだろうと思ったけど、劇場作品なのでタイアップで乃木坂のファンの方が観に来るかもしれないし結果よかったと思う。

 なぜなら、乃木坂の歌の世界とここさけの世界観はとても近いものがあります。私はどちらも好きでまさかアニメのエンディングで乃木坂を聴くことになるとは思わなかったけど、好きな世界同士のコラボとても嬉しかった。

 どちらも学校になじむのが苦手な人が共感できる世界観です。

 さて、私がこの作品を惜しいと評価する理由を述べますね。ラストシーンです。

 王道を狙ったと思わせておいて、最後は成瀬が坂上にまさかのフラれる展開。そして、田崎が成瀬に告白。坂上は仁藤とよりを戻そうとします。どうなったのかは描かれていない。

 おそらく、成瀬が成長する試練として失恋させることは最初から決まってたんじゃないかと思います。でも、田崎が好きになる描写がそんなにないし、仁藤は明らかに坂上に未練があるのでおそらくここ二人はくっつく。田崎はフラれるでしょう。

 坂上よ、こんなに世話やいて好感度あげといて成瀬をふるってお前・・・。

 ばっくれの際に成瀬が坂上の悪口を思いつく限り言うシーンはなんか笑ってしまいました。傷つけるような悪口じゃないしwほんとモテると思ってんじゃねーぞ!ですw

 そして、学校生活においてもその後の話がありません。ばっくれから戻った時点で成瀬は話せるようになってましたが、これからもそのままなのか?そんな単純な話なのか。フラれた相手と元カノがよりを戻して、同じクラスで耐えられるのか?この二人と友達になるのは難しいだろうから成瀬はまたクラスで孤立してしまうのではないか。クラス替えや進学でまたうまくいかないんじゃないか。そんな不安を残して終わってしまった。後味が悪いです。きっと見返すことはない作品ですね。

 心のうちにあふれる声は言葉にしなきゃ伝わらないというのがテーマですが、告白してみたら(結果が想像できてたとはいえ)フラれるなんて救いがなさすぎるよ。

 せめて、全員片想いエンドを希望したかったです。それならまだ成瀬も救われる。

 その点でのみこの作品は惜しいです。「キズナイーバー」ではある程度納得できる形で恋愛関係が終着したのでなおさら。

 ミュージカルも、私は学生演劇が苦手なので、抵抗あったのですが劇中劇は成瀬の書いた文面で読まれるだけでフルで入ってくるわけではないので見やすかった。

 玉子と王子をかけたファンタジー演出も面白かった。ここの内山くんの演技とても好きです。コミカルがこことDTM研しかなかったのが物足りないかな。

 総評としては、一般向け(劇場アニメ)として制作したものの、脚本がやっぱり一部の人をはじいてしまうのでどっちつかずの作品になってしまった。「キズナイーバー」のように深夜アニメファンに向けて作られた尺も長いもののほうが中途半端にならずにいいと思った。

 結末も一般層にアピールしたかったように見えるが、かえって作品の質を落とす結果になってしまった。本当に惜しいです。

 やっぱりこれはメンヘラが出てくる映画です、一部の人に向けていますと予告したほうがよかったんではないだろうか。それだと売上伸びないだろうから、一般に向けないで好きな人はどうぞというスタンスで作ったほうよかったんじゃないだろうか。

 最後に成瀬とてもよかったです。